Waka Poems

All waka poems in the Kōi Genji Monogatari

795 poems
101 きりつぼ
かきりとて/わかるゝ道の/かなしきに/いかまほしきは/いのちなりけり
201 きりつぼ
宮木のゝ/つゆふきむすふ/風のをとに/こはきかもとを/思ひこそやれ
301 きりつぼ
すゝむしの/こゑのかきりを/つくしても/なかき夜あかす/ふるなみた哉
401 きりつぼ
いとゝしく/虫のねしけき/あさちふに/露をきそふる/雲のうへ人
501 きりつぼ
あらき風/ふせきしかけの/かれしより/こはきかうへそ/しつ心なき
601 きりつぼ
たつねゆく/まほろしも哉/つてにても/たまのありかを/そことしるへく
701 きりつぼ
雲のうへも/なみたにくるゝ/秋の月/いかてすむらん/あさちふのやと
801 きりつぼ
いときなき/はつもとゆひに/なかき世を/ちきる心は/むすひこめつや
901 きりつぼ
むすひつる/心もふかき/もとゆひに/こきむらさきの/色しあせすは
1002 帚木
てをおりて/あひみし事を/かそふれは/これひとつやは/君かうきふし
1102 帚木
うきふしを/心ひとつに/かそへきて/こや君かてを/わかるへきおり
1202 帚木
ことのねも/月もえならぬ/やとなから/つれなき人を/ひきやとめける
1302 帚木
木からしに/吹あはすめる/ふえのねを/ひきとゝむへき/ことのはそなき
1402 帚木
山かつの/かきほあるとも/おり〱に/あはれはかけよ/なてしこの露
1502 帚木
さきましる/色はいつれと/わかねとも/猶常夏に/しくものそなき
1602 帚木
うちはらふ/袖も露けき/とこなつに/あらし吹そふ/秋もきにけり
1702 帚木
さゝかにの/ふるまひしるき/ゆふくれに/ひるますくせと/いふかあやなさ
1802 帚木
あふことの/夜をしへたてぬ/中ならは/ひるまもなにか/まはゆからまし
1902 帚木
つれなきを/うらみもはてぬ/しのゝめに/とりあへぬまて/おとろかすらむ
2002 帚木
身のうさを/なけくにあかて/あくる夜は/とりかさねてそ/ねもなかれける
2102 帚木
みし夢を/あふ夜ありやと/なけくまに/めさへあはてそ/ころもへにける
2202 帚木
はゝき木の/心をしらて/その原の/みちにあやなく/まとひぬるかな
2302 帚木
かすならぬ/ふせ屋におふる/名のうさに/あるにもあらす/きゆるはゝ木〻
2403 空蝉
うつせみの/みをかへてける/木のもとに/なを人からの/なつかしきかな
2503 空蝉
うつせみの/はにをく露の/木かくれて/しのひ〱に/ぬるゝそてかな
2604 夕顔
心あてに/それかとそみる/しら露の/ひかりそへたる/ゆふかほの花
2704 夕顔
よりてこそ/それかともみめ/たそかれに/ほの〱みつる/花のゆふかほ
2804 夕顔
咲花に/うつるてふなは/つゝめとも/おらてすきうき/けさのあさかほ
2904 夕顔
あさきりの/はれまもまたぬ/けしきにて/花に心を/とめぬとそみる
3004 夕顔
うはそくか/おこなふみちを/しるへにて/こむ世もふかき/契たかふな
3104 夕顔
さきの世の/契しらるゝ/身のうさに/ゆくすゑかねて/たのみかたさよ
3204 夕顔
いにしへも/かくやは人の/まとひけん/我またしらぬ/篠の目のみち
3304 夕顔
山のはの/心もしらて/ゆく月は/うはの空にて/影やたえなむ
3404 夕顔
夕露に/ひもとく花は/玉ほこの/たよりにみえし/えにこそありけれ
3504 夕顔
光ありと/みしゆふかほの/うは露は/たそかれ時の/そらめなりけり
3604 夕顔
みし人の/煙を雲と/なかむれは/ゆふへの空も/むつましきかな
3704 夕顔
とはぬをも/なとかととはて/ほとふるに/いかはかりかは/おもひみたるゝ
3804 夕顔
うつせみの/世はうき物と/しりにしを/またことの葉に/かゝるいのちよ
3904 夕顔
ほのかにも/軒はの荻を/むすはすは/露のかことを/なにゝかけまし
4004 夕顔
ほのめかす/風につけても/した荻の/なかはゝ霜に/むすほゝれつゝ
4104 夕顔
なく〱も/けふはわかゆふ/したひもを/いつれの世にか/とけてみるへき
4204 夕顔
あふまての/かたみはかりと/みしほとに/ひたすら袖の/くちにけるかな
4304 夕顔
せみのはも/たちかへてける/夏衣/かへすをみても/ねはなかれけり
4404 夕顔
すきにしも/けふわかるゝも/二みちに/ゆくかたしらぬ/秋のくれかな
4505 若紫
をひたゝむ/ありかもしらぬ/わか草を/をくらす露そ/きえんそらなき
4605 若紫
はつ草の/おひ行すゑも/しらぬまに/いかてか露の/きえんとすらむ
4705 若紫
はつ草の/わかはのうへを/みつるより/たひねの袖も/露そかはかぬ
4805 若紫
枕ゆふ/こよひはかりの/露けさを/み山のこけに/くらへさらなむ
4905 若紫
吹まよふ/みやまおろしに/夢さめて/涙もよほす/たきのをとかな
5005 若紫
さしくみに/袖ぬらしける/山水に/すめる心は/さはきやはする
5105 若紫
宮人に/行てかたらむ/山さくら/風よりさきに/きてもみるへく
5205 若紫
うとむけの/花まちえたる/心ちして/み山さくらに/めこそうつらね
5305 若紫
おく山の/松の戸ほそを/まれに明て/またみぬ花の/かほをみるかな
5405 若紫
ゆふまくれ/ほのかに花の/いろをみて/けさはかすみの/たちそわつらふ
5505 若紫
まことにや/花のあたりは/たちうきと/かすむる空の/けしきをもみむ
5605 若紫
面影は/身をもはなれす/山桜/心のかきり/とめてこしかと
5705 若紫
嵐吹/おのへのさくら/ちらぬまを/心とめける/ほとのはかなさ
5805 若紫
あさか山/あさくも人を/おもはぬに/なとやまの井の/かけはなるらむ
5905 若紫
くみそめて/くやしときゝし/山の井の/あさきなからや/かけをみるへき
6005 若紫
みても又/あふ夜まれなる/夢のうちに/やかてまきるゝ/わか身ともかな
6105 若紫
よかたりに/人やつたへん/たくひなく/うき身をさめぬ/夢になしても
6205 若紫
いはけなき/たつの一こゑ/ききしより/あしまになつむ/舟そえならぬ
6305 若紫
手につみて/いつしかもみむ/むらさきの/ねにかよひける/のへのわか草
6405 若紫
あしわかの/うらにみるめは/かたくとも/こはたちなから/かへるなみかは
6505 若紫
よるなみの/心もしらて/わかのうらに/たまもなひかぬ/ほとそうきたる
6605 若紫
あさほらけ/きりたつ空の/まよひにも/行すきかたき/いもかかとかな
6705 若紫
たちとまり/きりのまかきの/すきうくは/草の戸さしに/さはりしもせし
6805 若紫
ねはみねと/あはれとそおもふ/むさしのゝ/露わけわふる/草のゆかりを
6905 若紫
かこつへき/ゆへをしらねは/おほつかな/いかなる草の/ゆかりなるらん
7006 末摘花
もろともに/おほうち山は/いてつれと/いるかたみせぬ/いさよひのつき
7106 末摘花
さとわかぬ/かけをはみれと/ゆく月の/いるさの山を/たれかたつぬる
7206 末摘花
いくそたひ/君かしゝまに/まけぬらん/ものないひそと/いはぬたのみに
7306 末摘花
かねつきて/とちめむことは/さすかにて/こたえまうきそ/かつはあやなき
7406 末摘花
いはぬをも/いふにまさると/しりなから/をしこめたるは/くるしかりけり
7506 末摘花
ゆふきりの/はるゝけしきも/またみぬに/いふせさそふる/よひのあめかな
7606 末摘花
はれぬよの/月まつさとを/おもひやれ/おなし心に/なかめせすとも
7706 末摘花
あさひさす/のきのたるひは/とけなから/なとかつらゝの/むすほゝるらむ
7806 末摘花
ふりにける/かしらの雪を/みるひとも/おとらすぬらす/あさのそてかな
7906 末摘花
からころも/君かこゝろの/つらけれは/たもとはかくそ/そほちつゝのみ
8006 末摘花
なつかしき/色ともなしに/なにゝこの/すゑつむ花を/そてにふれけむ
8106 末摘花
くれなゐの/ひと花ころも/うすくとも/ひたすらくたす/なをしたてすは
8206 末摘花
あはぬよを/へたつるなかの/ころもてに/かさねていとゝ/みもしみよとや
8306 末摘花
くれなゐの/はなそあやなく/うとまるゝ/梅のたちえは/なつかしけれと
8407 紅葉賀
ものおもふに/たちまふへくも/あらぬみの/そてうちふりし/心しりきや
8507 紅葉賀
から人の/そてふることは/とをけれと/たちゐにつけて/あはれとはみき
8607 紅葉賀
いかさまに/むかしむすへる/ちきりにて/このよにかかる/中のへたてそ
8707 紅葉賀
みてもおもふ/みぬはたいかに/なけくらむ/こやよの人の/まとふてふやみ
8807 紅葉賀
よそへつゝ/みるに心は/なくさまて/露けさまさる/なてしこの花
8907 紅葉賀
袖ぬるゝ/露のゆかりと/おもふにも/猶うとまれぬ/やまとなてしこ
9007 紅葉賀
きみしこは/たなれのこまに/かりかはむ/さかりすきたる/下葉なりとも
9107 紅葉賀
さゝわけは/人やとかめむ/いつとなく/こまなつくめる/もりのこかくれ
9207 紅葉賀
たちぬるゝ/人しもあらし/あつまやに/うたてもかゝる/あまそゝきかな
9307 紅葉賀
人つまは/あなわつらはし/あつまやの/まやのあまりも/なれしとそおもふ
9407 紅葉賀
つゝむめる/なやもりいてん/ひきかはし/かくほころふる/なかのころもに
9507 紅葉賀
かくれなき/物としる〱/なつころも/きたるをうすき/心とそみる
9607 紅葉賀
うらみても/いふかひそなき/立かさね/ひきてかへりし/なみのなこりに
9707 紅葉賀
あらたちし/浪に心は/さはかねと/よせけむいそを/いかゝうらみぬ
9807 紅葉賀
なかたえは/かことやおふと/あやふさに/はなたのおひを/とりてたにみす
9907 紅葉賀
君にかく/ひきとられぬる/おひなれは/かくてたえぬる/なかとかこたむ
10007 紅葉賀
つきもせぬ/心のやみに/くるゝかな/雲井に人を/みるにつけても
10108 花宴
おほかたに/花のすかたを/みましかは/露も心の/おかれましやは
10208 花宴
ふかき夜の/あはれをしるも/入月の/おほろけならぬ/契とそおもふ
10308 花宴
うき身世に/やかてきえなは/たつねても/草のはらをは/とはしとやおもふ
10408 花宴
いつれそと/露のやとりを/わかむまに/こさゝかはらに/かせもこそふけ
10508 花宴
世にしらぬ/心ちこそすれ/有明の/月のゆくゑを/そらにまかへて
10608 花宴
わかやとの/花しなへての/色ならは/なにかはさらに/君をまたまし
10708 花宴
あつさゆみ/いるさのやまに/まとふ哉/ほのみし月の/かけやみゆると
10808 花宴
心いる/かたならませは/ゆみはりの/月なき空に/まよはましやは
10909 あふひ
かけをのみ/みたらし河の/つれなきに/身のうきほとそ/いととしらるゝ
11009 あふひ
はかりなき/ちひろのそこの/みるふさの/おひゆくすゑは/われのみそみむ
11109 あふひ
ちひろとも/いかてかしらむ/さためなく/みちひるしほの/ゝとけからぬに
11209 あふひ
はかなしや/人のかさせる/あふひゆへ/神のゆるしの/けふをまちける
11309 あふひ
かさしける/こゝろそあたに/おもほゆる/やそうち人に/なへてあふひを
11409 あふひ
くやしくも/かさしけるかな/なのみして/人たのめなる/草葉はかりを
11509 あふひ
袖ぬるゝ/恋ちとかつは/しりなから/おりたつたこの/身つからそうき
11609 あふひ
あさみにや/人はおりたつ/わかかたは/身もそほつまて/ふかき恋ちを
11709 あふひ
なけきわひ/空にみたるゝ/わかたまを/むすひとゝめよ/したかへのつま
11809 あふひ
のほりぬる/けふりはそれと/わかねとも/なへて雲ゐの/あはれなる哉
11909 あふひ
かきりあれは/うすゝみ衣/あさけれと/涙そ袖を/ふちとなしける
12009 あふひ
人の世を/あはれときくも/露けきに/をくるゝ袖を/おもひこそやれ
12109 あふひ
とまる身も/きえしもおなし/露の世に/心をくらむ/ほとそはかなき
12209 あふひ
雨となり/しくるゝ空の/うき雲を/いつれのかたと/わきてなかめむ
12309 あふひ
みし人の/雨となりにし/雲井さへ/いとゝ時雨に/かきくらす比
12409 あふひ
草かれの/まかきにのこる/なてしこを/わかれし秋の/かたみとそみる
12509 あふひ
いまもみて/なか〱袖を/くたすかな/かきほあれにし/やまとなてしこ
12609 あふひ
わきてこの/くれこそ袖は/露けゝれ/物おもふ秋は/あまたへぬれと
12709 あふひ
秋きりに/たちをくれぬと/きゝしより/時雨ゝ空も/いかゝとそおもふ
12809 あふひ
なき玉そ/いとゝかなしき/ねしとこの/あくかれかたき/心ならひに
12909 あふひ
君なくて/ちりつもりぬる/とこなつの/露うちはらひ/いく夜ねぬらむ
13009 あふひ
あやなくも/へたてけるかな/よをかさね/さすかになれし/よるの衣を
13109 あふひ
あまた年/けふあらためし/色ころも/きては涙そ/ふるこゝちする
13209 あふひ
あたらしき/としともいはす/ふる物は/ふりぬる人の/涙なりけり
13310 賢木
神かきは/しるしのすきも/なきものを/いかにまかへて/おれるさか木そ
13410 賢木
をとめこか/あたりとおもへは/さか木はの/香をなつかしみ/とめてこそおれ
13510 賢木
あかつきの/わかれはいつも/露けきを/こは世にしらぬ/秋の空かな
13610 賢木
おほかたの/秋のわかれも/かなしきに/なくねなそへそ/のへのまつむし
13710 賢木
やしまもる/くにつみ神も/こゝろあらは/あかぬわかれの/中をことはれ
13810 賢木
くにつかみ/空にことはる/中ならは/なをさりことを/まつやたゝさむ
13910 賢木
そのかみを/けふはかけしと/しのふれと/心のうちに/ものそかなしき
14010 賢木
ふりすてゝ/けふはゆくとも/すゝか河/やそせの浪に/袖はぬれしや
14110 賢木
すゝか河/やそせのなみに/ぬれ〱す/いせまてたれか/おもひをこせむ
14210 賢木
ゆくかたを/なかめもやらむ/この秋は/あふさか山を/霧なへたてそ
14310 賢木
かけひろみ/たのみしまつや/かれにけん/した葉ちり行/としの暮哉
14410 賢木
さえわたる/池のかゝみの/さやけきに/みなれしかけを/みぬそかなしき
14510 賢木
としくれて/いはゐの水も/こほりとち/みし人かけの/あせも行かな
14610 賢木
心から/方〱そてを/ぬらすかな/あくとをしふる/こゑにつけても
14710 賢木
なけきつゝ/わかよはかくて/すくせとや/むねのあくへき/時そともなく
14810 賢木
あふことの/かたきをけふに/かきらすは/いまいく世をか/なけきつゝへん
14910 賢木
なかきよの/うらみを人に/のこしても/かつは心を/あたとしらなむ
15010 賢木
あさちふの/露のやとりに/君ををきて/よもの嵐そ/しつ心なき
15110 賢木
風ふけは/まつそみたるゝ/色かはる/あさちか露に/かゝるさゝかに
15210 賢木
かけまくは/かしこけれとも/その神の/あきおもほゆる/ゆふたすきかな
15310 賢木
その神や/いかゝはありし/ゆふたすき/心にかけて/しのふらんゆへ
15410 賢木
九重に/霧やへたつる/雲のうへの/月をはるかに/思やるかな
15510 賢木
月影は/みし夜の秋に/かはらぬを/へたつる霧の/つらくもあるか
15610 賢木
木からしの/ふくにつけつつ/まちしまに/おほつかなさの/ころもへにけり
15710 賢木
あひみすて/しのふるころの/なみたをも/なへてのそらの/しくれとやみる
15810 賢木
別にし/けふはくれとも/みし人に/ゆきあふほとを/いつとたのまん
15910 賢木
なからふる/ほとはうけれと/ゆきめくり/けふはその世に/あふ心ちして
16010 賢木
月のすむ/雲井をかけて/したふとも/この世のやみに/猶やまとはむ
16110 賢木
おほふかたの/うきにつけては/いとへとも/いつかこの世を/そむきはつへき
16210 賢木
なかめかる/あまのすみかと/みるからに/まつしほたるゝ/まつかうら島
16310 賢木
ありし世の/なこりたになき/うらしまに/たちよる浪の/めつらしきかな
16410 賢木
それもかと/けさひらけたる/初花に/おとらぬ君か/にほひをそみる
16510 賢木
ときならて/けさ咲はなは/夏の雨に/しほれにけらし/にほふほとなく
16611 花散里
おちかへり/えそしのはれぬ/ほとゝきす/ほのかたらひし/やとのかきねに
16711 花散里
ほとゝきす/ことゝふこゑは/それなれと/あなおほつかな/さみたれのそら
16811 花散里
たち花の/かをなつかしみ/ほとゝきす/はなちるさとを/たつねてそとふ
16911 花散里
ひとめなく/あれたるやとは/たちはなの/はなこそのきの/つまとなりけれ
17012 須磨
とりへ山/もえしけふりも/まかふやと/あまのしほやく/うらみにそゆく
17112 須磨
なき人の/わかれやいとゝ/へたゝらむ/けふりとなりし/雲井ならては
17212 須磨
身はかくて/さすらへぬとも/君かあたり/さらぬかゝみの/かけはゝなれし
17312 須磨
わかれても/かけたにとまる/ものならは/かゝみをみても/なくさめてまし
17412 須磨
月かけの/やとれるそては/せはくとも/とめてもみはや/あかぬひかりを
17512 須磨
ゆきめくり/つゐにすむへき/月かけの/しはしくもらむ/そらなゝかめそ
17612 須磨
あふせなき/なみたの河に/しつみしや/なかるゝみおの/はしめなりけむ
17712 須磨
なみたかは/うかふみなはも/きえぬへし/なかれてのちの/せをもまたすて
17812 須磨
みしはなく/あるはかなしき/よのはてを/そむきしかひも/なく〱そふる
17912 須磨
わかれしに/かなしき事は/つきにしを/またそこの世の/うさはまされる
18012 須磨
ひきつれて/あふひかさしゝ/そのかみを/おもへはつらし/かものみつかき
18112 須磨
うき世をは/いまそわかるゝ/とゝまらむ/名をはたゝすの/神にまかせて
18212 須磨
なきかけや/いかゝみるらむ/よそへつゝ/なかむる月も/雲かくれぬる
18312 須磨
いつかまた/はるのみやこの/はなをみん/ときうしなへる/山かつにして
18412 須磨
さきてとく/ちるはうけれと/ゆく春は/花のみやこを/たちかへりみよ
18512 須磨
いけるよの/わかれをしらて/ちきりつゝ/命を人に/かきりけるかな
18612 須磨
おしからぬ/いのちにかへて/めのまへの/わかれをしはし/とゝめてしかな
18712 須磨
からくにゝ/名をのこしける/人よりも/ゆくゑしられぬ/いへゐをやせむ
18812 須磨
ふるさとを/みねのかすみは/へたつれと/なかむるそらは/おなし雲井か
18912 須磨
松しまの/あまのとまやも/いかならむ/すまのうら人/しほたるゝころ
19012 須磨
こりすまの/うらのみるめの/ゆかしきを/しほやくあまや/いかゝおもはん
19112 須磨
しほたるゝ/ことをやくにて/まつしまに/としふるあまも/なけきをそつむ
19212 須磨
浦にたく/あまたにつゝむ/こひなれは/くゆるけふりよ/ゆくかたそなき
19312 須磨
浦人の/しほくむそてに/くらへみよ/なみ路へたつる/よるのころもを
19412 須磨
うきめかる/いせをのあまを/思ひやれ/もしほたるてふ/すまのうらにて
19512 須磨
いせしまや/しほひのかたに/あさりても/いふかひなきは/我身なりけり
19612 須磨
伊勢人の/浪のうへこく/をふねにも/うきめはからて/のらましものを
19712 須磨
あまかつむ/なけきのなかに/しほたれて/いつまてすまの/うらになかめむ
19812 須磨
あれまさる/のきのしのふを/なかめつゝ/しけくも露の/かゝる袖かな
19912 須磨
恋わひて/なくねにまかふ/うらなみは/おもふかたより/風やふくらん
20012 須磨
はつかりは/こひしき人の/つらなれや/たひのそらとふ/こゑのかなしき
20112 須磨
かきつらね/むかしのことそ/おもほゆる/かりはそのよの/友ならねとも
20212 須磨
こゝろから/とこよをすてゝ/なくかりを/くものよそにも/おもひけるかな
20312 須磨
とこよいてゝ/たひのそらなる/かりかねも/つらにをくれぬ/ほとそなくさむ
20412 須磨
みるほとそ/しはしなくさむ/めくりあはん/月のみやこは/ゝるかなれとも
20512 須磨
うしとのみ/ひとへにものは/おもほえて/ひたりみきにも/ぬるゝ袖かな
20612 須磨
ことのねに/ひきとめらるゝ/つなてなは/たゆたふ心/君しるらめや
20712 須磨
こゝろありて/ひきてのつなの/たゆたはゝ/うちすきましや/すまのうら浪
20812 須磨
山かつの/いほりにたける/しは〱も/ことゝひこなん/こふるさと人
20912 須磨
いつかたの/雲路に我も/まよひなむ/月のみるらむ/こともはつかし
21012 須磨
ともちとり/もろこゑになく/あか月は/ひとりねさめの/とこもたのもし
21112 須磨
いつとなく/大宮人の/こひしきに/さくらかさしゝ/けふもきにけり
21212 須磨
ふるさとを/いつれのはるか/ゆきてみん/うらやましきは/かへるかりかね
21312 須磨
あかなくに/かりのとこよを/たちわかれ/花のみやこに/みちやまとはむ
21412 須磨
雲ちかく/とひかふたつも/そらにみよ/我はゝる日の/くもりなき身そ
21512 須磨
たつかなき/雲井にひとり/ねをそなく/つはさならへし/ともを恋つゝ
21612 須磨
しらさりし/おほうみのはらに/なかれきて/ひとかたにやは/ものはかなしき
21712 須磨
やをよろつ/神もあはれと/おもふらむ/をかせるつみの/それとなけれは
21813 明石
浦風や/いかに吹らむ/おもひやる/袖うちぬらし/波まなきころ
21913 明石
海にます/神のたすけに/かゝらすは/しほのやをあひに/さすらへなまし
22013 明石
はるかにも/おもひやるかな/しらさりし/浦よりをちに/うらつたひして
22113 明石
あはとみる/あはちのしまの/あはれさへ/のこるくまなく/すめるよの月
22213 明石
ひとりねは/君もしりぬや/つれ〱と/思ひあかしの/うらさひしさを
22313 明石
たひころも/うらかなしさに/あかしかね/草の枕は/夢もむすはす
22413 明石
をちこちも/しらぬ雲ゐに/なかめわひ/かすめしやとの/木すゑをそとふ
22513 明石
なかむらん/おなし雲ゐを/なかむるは/思ひもおなし/思ひなるらむ
22613 明石
いふせくも/こゝろにものを/なやむかな/やよやいかにと/ゝふ人もなみ
22713 明石
おもふらん/こゝろのほとや/ゝよいかに/またみぬ人の/きゝかなやまむ
22813 明石
秋のよの/月けのこまよ/わかこふる/雲ゐをかけれ/ときのまもみん
22913 明石
むつことを/かたりあはせむ/人もかな/うき世の夢も/なかはさむやと
23013 明石
あけぬ夜に/やかてまとへる/心には/いつれを夢と/わきてかたらむ
23113 明石
しほ〱と/まつそなかるゝ/かりそめの/みるめはあまの/すさひなれとも
23213 明石
うらなくも/思ひけるかな/ちきりしを/松より波は/こえし物そと
23313 明石
このたひは/たちわかるとも/ゝしほやく/けふりはおなし/かたになひかむ
23413 明石
かきつめて/あまのたくもの/おもひにも/いまはかひなき/うらみたにせし
23513 明石
猶さりに/たのめをくめる/ひとことを/つきせぬねにや/かけてしのはん
23613 明石
あふまての/かたみにちきる/中のをの/しらへはことに/かはらさらなむ
23713 明石
うちすてゝ/たつもかなしき/うら波の/なこりいかにと/思ひやるかな
23813 明石
年へつる/とまやもあれて/うき波の/かへるかたにや/身をたくへまし
23913 明石
よる波に/たちかさねたる/たひ衣/しほとけしとや/人のいとはむ
24013 明石
かたみにそ/かふへかりける/あふことの/日かすへたてん/中のころもを
24113 明石
よをうみに/こゝらしほしむ/身と成て/猶このきしを/えこそはなれね
24213 明石
宮こいてし/春のなけきに/おとらめや/としふる浦を/わかれぬる秋
24313 明石
わたつ海に/しなへうらふれ/ひるのこの/あしたゝさりし/年はへにけり
24413 明石
宮はしら/めくりあひける/ときしあれは/わかれし春の/うらみのこすな
24513 明石
なけきつゝ/あかしの浦に/あさ霧の/たつやと人を/思ひやるかな
24613 明石
すまの浦に/心をよせし/ふな人の/やかてくたせる/袖をみせはや
24713 明石
帰ては/かことやせまし/よせたりし/なこりに袖の/ひかたかりしを
24814 みをつくし
かねてより/へたてぬ中と/ならはねと/わかれはおしき/物にそありける
24914 みをつくし
うちつけの/わかれをおしむ/かことにて/おもはむかたに/したひやはせぬ
25014 みをつくし
いつしかも/袖うちかけむ/おとめこか/世をへてなつる/いはのおひさき
25114 みをつくし
ひとりして/なつるは袖の/ほとなきに/おほふはかりの/かけをしそまつ
25214 みをつくし
おもふとち/なひくかたには/あらすとも/われそけふりに/さきたちなまし
25314 みをつくし
たれにより/世をうみ山に/行めくり/たえぬなみたに/うきしつむみそ
25414 みをつくし
うみ松や/ときそともなき/かけにゐて/なにのあやめも/いかにわくらむ
25514 みをつくし
かすならぬ/みしまかくれに/なくたつを/けふもいかにと/ゝふ人そなき
25614 みをつくし
くひなたに/おとろかさすは/いかにして/あれたるやとに/月をいれまし
25714 みをつくし
をしなへて/たゝくくひなに/おとろかは/うはの空なる/月もこそいれ
25814 みをつくし
すみよしの/まつこそものは/かなしけれ/神世のことを/かけておもへは
25914 みをつくし
あらかりし/なみのまよひに/住よしの/神をはかけて/わすれやはする
26014 みをつくし
みをつくし/こふるしるしに/こゝまても/めくりあひける/えにはふかしな
26114 みをつくし
かすならて/なにはのことも/かひなきに/なとみをつくし/おもひそめけむ
26214 みをつくし
露けさの/むかしににたる/たひころも/たみのゝしまの/なにはかくれす
26314 みをつくし
ふりみたれ/ひまなき空に/なき人の/あまかけるらむ/やとそかなしき
26414 みをつくし
きえかてに/ふるそかなしき/かきくらし/わか身それとも/おもほえぬよに
26515 蓬生
たゆましき/すちをたのみし/玉かつら/思ひのほかに/かけはなれぬる
26615 蓬生
玉かつら/たえてもやまし/ゆくみちの/たむけの神も/かけてちかはむ
26715 蓬生
なき人を/こふるたもとの/ひまなきに/あれたるのきの/しつくさへそふ
26815 蓬生
たつねても/われこそとはめ/みちもなく/ふかきよもきの/もとの心を
26915 蓬生
ふちなみの/うちすきかたく/みえつるは/まつこそやとの/しるしなりけれ
27015 蓬生
としをへて/まつしるしなき/わかやとを/花のたよりに/すきぬはかりか
27116 関屋
ゆくとくと/せきとめかたき/涙をや/たえぬし水と/人はみるらむ
27216 関屋
わくらはに/ゆきあふ道を/たのみしも/猶かひなしや/しほならぬうみ
27316 関屋
あふさかの/関やいかなる/せきなれは/しけきなけきの/中をわくらん
27417 絵合
わかれ路に/そへしをくしを/かことにて/はるけき中と/神やいさめし
27517 絵合
わかるとて/はるかにいひし/ひとことも/かへりてものは/いまそかなしき
27617 絵合
ひとりゐて/なけきしよりは/あまのすむ/かたをかくてそ/みるへかりける
27717 絵合
うきめみし/そのおりよりも/けふはまた/すきにしかたに/かへる涙か
27817 絵合
いせのうみの/ふかき心を/たとらすて/ふりにしあとゝ/なみやけつへき
27917 絵合
雲のうへに/思ひのほれる/こゝろには/ちいろのそこも/はるかにそみる
28017 絵合
みるめこそ/うらふりぬらめ/としへにし/いせをのあまの/なをやしつめむ
28117 絵合
みこそかく/しめのほかなれ/そのかみの/心のうちを/わすれしもせす
28217 絵合
しめのうちは/むかしにあらぬ/こゝちして/神よの事も/いまそ恋しき
28318 松風
ゆくさきを/はるかにいのる/わかれちに/たえぬはおいの/涙なりけり
28418 松風
もろともに/みやこはいてき/このたひや/ひとり野中の/みちにまとはん
28518 松風
いきてまた/あひみむことを/いつとてか/ゝきりもしらぬ/よをはたのまむ
28618 松風
かのきしに/心よりにし/あま舟の/そむきしかたに/こきかへる哉
28718 松風
いくかへり/ゆきかふ秋を/すくしつゝ/うき木にのりて/われかへるらん
28818 松風
身をかへて/ひとりかへれる/山さとに/きゝしににたる/松風そふく
28918 松風
ふるさとに/みしよのともを/こひわひて/さえつることを/たれかわくらん
29018 松風
すみなれし/人はかへりて/たとれとも/しみつはやとの/あるしかほなる
29118 松風
いさらゐは/ゝやくのことも/わすれしを/もとのあるしや/おもかはりせる
29218 松風
ちきりしに/かはらぬことの/しらへにて/たえぬ心の/ほとはしりきや
29318 松風
かはらしと/契しことを/たのみにて/まつのひゝきに/ねをそへしかな
29418 松風
月のすむ/かはのをちなる/里なれは/かつらのかけは/のとけかるらむ
29518 松風
ひさかたの/ひかりにちかき/名のみして/あさゆふきりも/はれぬ山里
29618 松風
めくりきて/ゝにとるはかり/さやけきや/あはちのしまの/あはとみし月
29718 松風
うき雲に/しはしまかひし/月かけの/すみはつるよそ/のとけかるへき
29818 松風
雲のうへの/すみかをすてゝ/よはの月/いつれのたにゝ/かけかくしけむ
29919 薄雲
雪ふかみ/み山のみちは/はれすとも/猶ふみかよへ/あとたえすして
30019 薄雲
ゆきまなき/よしのゝ山を/たつねても/心のかよふ/あとたえめやは
30119 薄雲
すゑとをき/ふたはの松に/ひきわかれ/いつかこたかき/かけをみるへき
30219 薄雲
おひそめし/ねもふかけれは/たけくまの/松にこまつの/ちよをならへん
30319 薄雲
舟とむる/をちかた人の/なくはこそ/あすかへりこむ/せなとまちみめ
30419 薄雲
行てみて/あすもさねこむ/中〱に/をちかた人は/心をくとも
30519 薄雲
入日さす/みねにたなひく/うす雲は/もの思ふ袖に/色やまかへる
30619 薄雲
君もさは/あはれをかはせ/人しれす/わか身にしむる/秋のゆふ風
30719 薄雲
いさりせし/かけわすられぬ/かゝり火は/身のうき舟や/したひきにけん
30819 薄雲
あさからぬ/したの思ひを/しらねはや/猶かゝり火の/かけはさはける
30920 朝顔
人しれす/神のゆるしを/まちしまに/こゝらつれなき/世をすくすかな
31020 朝顔
なへてよの/あはれはかりを/とふからに/ちかひしことゝ/神やいさめむ
31120 朝顔
みしおりの/露わすられぬ/あさかほの/はなのさかりは/すきやしぬらん
31220 朝顔
あきはてゝ/きりのまかきに/むすほゝれ/あるかなきかに/うつるあさかほ
31320 朝顔
いつのまに/よもきかもとゝ/むすほゝれ/ゆきふるさとゝ/あれしかきねそ
31420 朝顔
としふれと/この契こそ/わすられね/おやのおやとか/いひしひとこと
31520 朝顔
身をかへて/後もまちみよ/このよにて/おやをわするゝ/ためしありや
31620 朝顔
つれなさを/むかしにこりぬ/心こそ/人のつらきに/そへてつらけれ
31720 朝顔
あらためて/なにかはみえむ/人のうへに/かゝりときゝし/心かはりを
31820 朝顔
こほりとち/いしまの水は/ゆきなやみ/空すむ月の/かけそなかるゝ
31920 朝顔
かきつめて/むかし恋しき/ゆきもよに/あはれをそふる/をしのうきねか
32020 朝顔
とけてねぬ/ねさめさひしき/冬の夜に/むすほゝれつる/夢のみしかさ
32120 朝顔
なき人を/したふ心に/まかせても/かけみぬみつの/せにやまとはむ
32221 少女
かけきやは/かはせのなみも/たちかへり/君かみそきの/ふちのやつれを
32321 少女
ふちころも/きしはきのふと/思ふまに/けふはみそきの/せにかはる世を
32421 少女
さ夜中に/ともよひわたる/かりかねに/うたてふきそふ/荻のうはかせ
32521 少女
くれなゐの/なみたにふかき/袖の色を/あさみとりにや/いひしほるへき
32621 少女
いろ〱に/身のうきほとの/しらるゝは/いかにそめける/中のころもそ
32721 少女
しもこほり/うたてむすへる/あけくれの/そらかきくらし/ふるなみたかな
32821 少女
あめにます/とよをかひめの/みや人も/わか心さす/しめをわするな
32921 少女
おとめ子も/神さひぬらし/あまつ袖/ふるき世のとも/よはひへぬれは
33021 少女
かけていへは/けふのことゝそ/おもほゆる/日影のしもの/袖にとけしも
33121 少女
日影にも/しるかりけめや/をとめこか/あまのは袖に/かけし心は
33221 少女
うくひすの/さえつるこゑは/むかしにて/むつれし花の/かけそかはれる
33321 少女
こゝのへを/かすみへたつる/すみかにも/春とつけくる/鴬のこゑ
33421 少女
いにしへを/ふきつたへたる/ふえ竹に/さえつる鳥の/ねさへかはらぬ
33521 少女
鴬の/むかしをこひて/さえつるは/こつたふ花の/色やあせたる
33621 少女
心から/春まつそのは/わかやとの/紅葉を風の/つてにたにみよ
33721 少女
風にちる/紅葉はかろし/春の色を/いはねの松に/かけてこそみめ
33822 玉鬘
ふな人も/たれをこふとか/おほしまの/うらかなしけに/こゑのきこゆる
33922 玉鬘
こしかたも/ゆくゑもしらぬ/おきにいてゝ/あはれいつくに/君をこふらん
34022 玉鬘
君にもし/心たかはゝ/まつらなる/かゝみの神を/かけてちかはむ
34122 玉鬘
としをへて/いのる心の/たかひなは/かゝみの神を/つらしとやみむ
34222 玉鬘
うき島を/こきはなれても/ゆくかたや/いつくとまりと/しらすもあるかな
34322 玉鬘
ゆくさきも/みえぬ浪路に/ふなてして/風にまかする/みこそうきたれ
34422 玉鬘
うきことに/むねのみさはく/ひゝきには/ひゝきのなたも/さはらさりけり
34522 玉鬘
二もとの/杉のたちとを/たつねすは/ふる河のへに/君をみましや
34622 玉鬘
はつせ河/はやくの事は/しらねとも/けふのあふ瀬に/身さへなかれぬ
34722 玉鬘
しらすとも/たつねてしらむ/みしまえに/おふるみくりの/すちはたえしを
34822 玉鬘
かすならぬ/みくりやなにの/すちなれは/うきにしもかく/ねをとゝめけむ
34922 玉鬘
こひわたる/身はそれなれと/玉かつら/いかなるすちを/たつねきつらむ
35022 玉鬘
きてみれは/うらみられけり/からころも/かへしやりてん/袖をぬらして
35122 玉鬘
かへさむと/いふにつけても/かたしきの/よるの衣を/おもひこそやれ
35223 初音
うすこほり/とけぬるいけの/かゝみには/よにたくひなき/かけそならへる
35323 初音
くもりなき/いけのかゝみに/よろつ世を/すむへきかけそ/しるくみえける
35423 初音
とし月を/まつにひかれて/ふる人に/けふうくひすの/はつねきかせよ
35523 初音
ひきわかれ/としはふれとも/うくひすの/すたちしまつの/ねをわすれめや
35623 初音
めつらしや/はなのねくらに/こつたひて/たにのふるすを/とつるうくひす
35723 初音
ふるさとの/春のこすゑに/たつねきて/よのつねならぬ/はなをみるかな
35824 胡蝶
かせふけは/なみの花さへ/色みえて/こやなにたてる/やまふきのさき
35924 胡蝶
はるのいけや/ゐてのかはせに/かよふらん/きしの山ふき/そこもにほへり
36024 胡蝶
かめのうへの/山もたつねし/ふねのうちに/おいせぬなをは/こゝにのこさむ
36124 胡蝶
春の日の/うらゝにさして/ゆくふねは/さほのしつくも/花そちりける
36224 胡蝶
むらさきの/ゆへにこゝろを/しめたれは/ふちに身なけん/なやはおしけき
36324 胡蝶
ふちにみを/なけつへしやと/この春は/花のあたりを/たちさらてみよ
36424 胡蝶
はなそのゝ/こてふをさへや/したくさに/秋まつむしは/うとくみるらむ
36524 胡蝶
こてふにも/さそはれなまし/こゝろありて/やへ山ふきを/へたてさりせは
36624 胡蝶
おもふとも/君はしらしな/わきかへり/いはもるみつに/いろしみえねは
36724 胡蝶
ませのうちに/ねふかくうへし/竹のこの/をのかよゝにや/おひわかるへき
36824 胡蝶
いまさらに/いかならむよか/わかたけの/おいはしめけむ/ねをはたつねん
36924 胡蝶
たちはなの/かほりしそてに/よそふれは/かはれるみとも/おもほえぬかな
37024 胡蝶
そてのかを/よそふるからに/たちはなの/みさへはかなく/なりもこそすれ
37124 胡蝶
うちとけて/ねもみぬものを/わかくさの/ことありかほに/むすほゝるらむ
37225 蛍
なくこゑも/きこえぬむしの/思ひたに/人のけつには/きゆるものかは
37325 蛍
声はせて/身をのみこかす/ほたるこそ/いふよりまさる/おもひなるらめ
37425 蛍
けふさへや/ひく人もなき/みかくれに/おふるあやめの/ねのみなかれん
37525 蛍
あらはれて/いとゝあさくも/みゆるかな/あやめもわかす/なかれけるねの
37625 蛍
そのこまも/すさめぬ草と/なにたてる/みきはのあやめ/けふやひきつる
37725 蛍
にほとりに/かけをならふる/わかこまは/いつかあやめに/ひきわかるへき
37825 蛍
思ひあまり/むかしのあとを/たつぬれと/おやにそむける/こそたくひなき
37925 蛍
ふるきあとを/たつぬれとけに/なかりけり/このよにかゝる/おやの心は
38026 常夏
なてしこの/とこなつかしき/色をみは/もとのかきねを/人やたつねむ
38126 常夏
山かつの/かきほにおひし/なてしこの/もとのねさしを/たれかたつねん
38226 常夏
くさわかみ/ひたちのうらの/いかゝさき/いかてあひみん/たこのうらなみ
38326 常夏
ひたちなる/するかのうみの/すまの浦に/なみたちいてよ/はこさきの松
38427 篝火
かゝり火に/たちそふこひの/けふりこそ/よにはたえせぬ/ほのをなりけれ
38527 篝火
行ゑなき/空にけちてよ/かゝり火の/たよりにたくふ/けふりとならは
38628 野分
おほかたに/おきのはすくる/風のをとも/うき身ひとつに/しむ心ちして
38728 野分
ふきみたる/風のけしきに/をみなへし/ゝほれしぬへき/心ちこそすれ
38828 野分
した露に/なひかましかは/をみなへし/あらきかせには/しほれさらまし
38928 野分
風さはき/むら雲まかふ/夕にも/わするゝまなく/わすられぬ君
39029 行幸
雪深き/をしほの山に/たつきしの/ふるき跡をも/けふは尋よ
39129 行幸
小塩山/みゆきつもれる/松原に/けふはかりなる/あとやなからむ
39229 行幸
うちきえし/あさくもりせし/み雪には/さやかに空の/光やはみし
39329 行幸
あかねさす/光は空に/くもらぬを/なとてみ雪に/めをきらしけむ
39429 行幸
ふた方に/いひもてゆけは/玉くしけ/わか身はなれぬ/かけこなりけり
39529 行幸
我身こそ/恨られけれ/から衣/君かたもとに/なれすとおもへは
39629 行幸
唐衣/又から衣/からころも/かへす〱も/から衣なる
39729 行幸
うらめしや/興津玉もを/かつくまて/磯かくれける/あまの心よ
39829 行幸
よるへなみ/かゝるなきさに/うちよせて/あまもたつねぬ/もくつとそみし
39930 藤袴
おなしのゝ/露にやつるゝ/ふちはかま/あはれはかけよ/かことはかりも
40030 藤袴
たつぬるに/はるけき野への/露ならは/うすむらさきや/かことならまし
40130 藤袴
いもせ山/ふかきみちをは/たつねすて/をたえのはしに/ふみまよひける
40230 藤袴
まとひける/みちをはしらす/いもせ山/たと〱しくそ/たれもふみゝし
40330 藤袴
かすならは/いとひもせまし/長月に/命をかくる/ほとそはかなき
40430 藤袴
あさ日さす/ひかりをみても/たまさゝの/はわけの霜を/けたすもあらなむ
40530 藤袴
わすれなむ/と思ふも物の/かなしきを/いかさまにして/いかさまにせむ
40630 藤袴
心もて/ひかりにむかふ/あふひたに/あさをく霜を/ゝのれやはけつ
40731 真木柱
おりたちて/くみはみねとも/わたり川/人のせとはた/ちきらさりしを
40831 真木柱
みつせ川/わたらぬさきに/いかてなを/涙のみをの/あはときえなん
40931 真木柱
心さへ/そらにみたれし/雪もよに/ひとりさえつる/かたしきの袖
41031 真木柱
ひとりゐて/こかるゝむねの/くるしきに/思ひあまれる/ほのをとそみし
41131 真木柱
うきことを/思ひさはけは/さま〱に/くゆるけふりそ/いとゝたちそふ
41231 真木柱
いまはとて/やとかれぬとも/なれきつる/まきのはしらは/われをわするな
41331 真木柱
なれきとは/おもひいつとも/なにゝより/たちとまるへき/まきの柱そ
41431 真木柱
あさけれと/いし間の水は/すみはてゝ/やともる君や/かけはなるへき
41531 真木柱
ともかくも/いはまの水の/むすほゝれ/かけとむへくも/おもほえぬよを
41631 真木柱
みやま木に/はねうちかはし/ゐる鳥の/またなくねたき/春にもあるかな
41731 真木柱
なとてかく/はひあひかたき/むらさきを/心にふかく/思ひそめけむ
41831 真木柱
いかならん/色ともしらぬ/むらさきを/心してこそ/人はそめけれ
41931 真木柱
九重に/かすみへたては/梅のはな/たゝかはかりも/匂ひこしとや
42031 真木柱
かはかりは/風にもつてよ/はなのえに/たちならふへき/にほひなくとも
42131 真木柱
かきたれて/のとけき比の/春雨に/ふるさと人を/いかにしのふや
42231 真木柱
なかめする/軒のしつくに/袖ぬれて/うたかた人を/しのはさらめや
42331 真木柱
思はすに/いてのなかみち/へたつとも/いはてそこふる/山ふきのはな
42431 真木柱
おなしすに/かへりしかひの/みえぬかな/いかなる人か/てにゝきるらん
42531 真木柱
すかくれて/かすにもあらぬ/かりのこを/いつかたにかは/とりかくすへき
42631 真木柱
興津ふね/よるへなみ路に/たゝよはゝ/さほさしよらむ/とまりをしへよ
42731 真木柱
よるへなみ/風のさはかす/舟人も/思はぬかたに/いそつたいせす
42832 梅枝
花の香は/ちりにし枝に/とまらねと/うつらむ袖に/あさくしまめや
42932 梅枝
花のえに/いとゝこゝろを/しむるかな/人のとかめん/香をはつゝめと
43032 梅枝
うくひすの/こゑにやいとゝ/あくかれん/こゝろしめつる/花のあたりに
43132 梅枝
色も香も/うつるはかりに/この春は/花さくやとを/かれすもあらなん
43232 梅枝
鴬の/ねくらのえたも/なひくまて/なをふきとをせ/よはの笛竹
43332 梅枝
心ありて/風のよくめる/はなの木に/とりあへぬまて/ふきやよるへき
43432 梅枝
かすみたに/月と花とを/へたてすは/ねくらの鳥も/ほころひなまし
43532 梅枝
花の香を/えならぬ袖に/うつしもて/ことあやまりと/いもやとかめむ
43632 梅枝
めつらしと/ふる里人も/まちそみむ/花のにしきを/きてかへる君
43732 梅枝
つれなさは/うき世のつねに/なりゆくを/わすれぬ人や/人にことなる
43832 梅枝
かきりとて/忘かたきを/わするゝも/こや世になひく/心なるらむ
43933 藤裏葉
わかやとの/藤の色こき/たそかれに/たつねやはこぬ/春のなこりを
44033 藤裏葉
中〱に/折やまとはむ/ふちのはな/たそかれときの/たと〱しくは
44133 藤裏葉
紫に/かことはかけむ/ふちのはな/まつよりすきて/うれたけれとも
44233 藤裏葉
幾かへり/露けき春を/すくしきて/はなのひもとく/をりにあふらん
44333 藤裏葉
たをやめの/袖にまかへる/藤の花/みる人からや/色もまさらむ
44433 藤裏葉
あさきなを/いひなかしける/川くちは/いかゝもらしゝ/関のあらかき
44533 藤裏葉
もりにける/くきたのせきを/川くちの/あさきにのみは/おほせさらなん
44633 藤裏葉
とかむなよ/しのひにしほる/てもたゆみ/けふあらはるゝ/袖のしつくを
44733 藤裏葉
なにとかや/けふのかさしよ/かつみつゝ/おほめくまても/なりにけるかな
44833 藤裏葉
かさしても/かつたとらるゝ/くさのなは/かつらをおりし/人やしるらん
44933 藤裏葉
あさみとり/わかはの菊を/露にても/こきむらさきの/色とかけきや
45033 藤裏葉
ふた葉より/なたゝるそのゝ/菊なれは/あさき色わく/露もなかりき
45133 藤裏葉
なれこそは/岩もるあるし/みし人の/ゆくゑはしるや/ゝとのまし水
45233 藤裏葉
なき人の/かけたにみえす/つれなくて/こゝろをやれる/いさらゐの水
45333 藤裏葉
そのかみの/おい木はむへも/くちぬらむ/うへしこ松も/こけおひにけり
45433 藤裏葉
いつれをも/かけとそたのむ/ふたはより/ねさしかはせる/松のすゑ〱
45533 藤裏葉
色まさる/まかきの菊も/をり〱に/袖うちかけし/秋をこふらし
45633 藤裏葉
むらさきの/雲にまかへる/きくのはな/にこりなきよの/ほしかとそみる
45733 藤裏葉
秋をへて/時雨ふりぬる/里人も/かゝるもみちの/をりをこそみね
45833 藤裏葉
よのつねの/もみちとやみる/いにしへの/ためしにひける/にはのにしきを
45934 若菜上
さしなから/むかしをいまに/つたふれは/たまのをくしそ/神さひにける
46034 若菜上
さしつきに/みる物にもか/よろつ世を/つけのをくしの/神さふるまて
46134 若菜上
わか葉さす/野へのこ松を/ひきつれて/もとのいはねを/いのるけふかな
46234 若菜上
小松はら/すゑのよはひに/ひかれてや/のへのわかなも/年をつむへき
46334 若菜上
めにちかく/うつれはかはる/世の中を/行すゑとをく/たのみけるかな
46434 若菜上
命こそ/たゆともたえめ/さためなき/よのつねならぬ/中の契を
46534 若菜上
なかみちを/へたつるほとは/なけれとも/心みたるゝ/けさのあは雪
46634 若菜上
はかなくて/うはのそらにそ/きえぬへき/風にたゝよふ/春のあは雪
46734 若菜上
そむきにし/この世にのこる/こゝろこそ/いる山みちの/ほたしなりけれ
46834 若菜上
そむくよの/うしろめたくは/さりかたき/ほたしをしゐて/かけなはなれそ
46934 若菜上
とし月を/中にへたてゝ/あふさかの/さもせきかたく/おつる涙か
47034 若菜上
なみたのみ/せきとめかたき/しみつにて/行あふみちは/ゝやくたえにきな
47134 若菜上
しつみしも/わすれぬものを/こりすまに/身もなけつへき/やとの藤なみ
47234 若菜上
身をなけん/ふちもまことの/ふちならて/かけしやさらに/こりすまの浪
47334 若菜上
身にちかく/秋やきぬらん/みるまゝに/あを葉の山も/うつろひにけり
47434 若菜上
水鳥の/あをははいろも/かはらぬを/萩のしたこそ/けしきことなれ
47534 若菜上
おいのなみ/かひあるうらに/たちいてゝ/しほたるゝあま/をたれかとかめむ
47634 若菜上
しほたるゝ/あまを浪路の/しるへにて/たつねもみはや/はまのとまやを
47734 若菜上
よをすてゝ/あかしのうらに/すむ人も/心のやみは/ゝるけしもせし
47834 若菜上
ひかりいてん/あか月ちかく/なりにけり/いまそみしよの/夢かたりする
47934 若菜上
いかなれは/花にこつたふ/うくひすの/桜をわきて/ねくらとはせぬ
48034 若菜上
み山木に/ねくらさたむる/はこ鳥も/いかてか花の/いろにあくへき
48134 若菜上
よそにみて/おらぬなけきは/しけれとも/なこりこひしき/花の夕かけ
48234 若菜上
いまさらに/色にないてそ/山さくら/をよはぬ枝に/心かけきと
48335 若菜下
恋わふる/人のかたみと/てならせは/なれよなにとて/なくねなるらむ
48435 若菜下
たれか又/心をしりて/住吉の/神世をへたる/松にことゝふ
48535 若菜下
すみのえを/いけるかひある/なきさとは/年ふるあまも/けふやしるらん
48635 若菜下
むかしこそ/まつわすられね/住吉の/神のしるしを/みるにつけても
48735 若菜下
すみの江の/松に夜ふかく/をく霜は/神のかけたる/ゆふかつらかも
48835 若菜下
神ひとの/てにとりもたる/榊葉に/ゆふかけそふる/ふかきよの霜
48935 若菜下
はふりこか/ゆふうちまかひ/をく霜は/けにいちしるき/神のしるしか
49035 若菜下
おきてゆく/空もしられぬ/あけくれに/いつくの露の/かゝる袖なり
49135 若菜下
あけくれの/空にうきみは/きえなゝん/夢なりけりと/みてもやむへく
49235 若菜下
くやしくそ/つみをかしける/あふひ草/神のゆるせる/かさしならぬに
49335 若菜下
もろかつら/おち葉をなにゝ/ひろひけむ/名はむつましき/かさしなれとも
49435 若菜下
わか身こそ/あらぬさまなれ/それなから/空おほれする/きみは君也
49535 若菜下
きえとまる/ほとやはふへき/たまさかに/はちすのつゆの/かゝる許を
49635 若菜下
契をかむ/この世ならても/はちすはに/玉ゐるつゆの/こゝろへたつな
49735 若菜下
夕露に/袖ぬらせとや/ひくらしの/なくをきく〱/おきて行らむ
49835 若菜下
まつ里も/いかゝきくらん/かた〱に/心さはかす/ひくらしのこゑ
49935 若菜下
あまの世を/よそにきかめや/すまの浦に/もしほたれしも/たれならなくに
50035 若菜下
あま舟に/いかゝは思ひ/をくれけん/あかしのうらに/いさりせしきみ
50136 柏木
いまはとて/もえむけふりも/むすほゝれ/たえぬおもひの/猶やのこらむ
50236 柏木
たちそひて/きえやしなまし/うきことを/思みたるゝ/けふりくらへに
50336 柏木
ゆくゑなき/そらのけふりと/なりぬとも/おもふあたりを/たちはゝなれし
50436 柏木
たかよにか/たねはまきしと/人とはゝ/いかゝいはねの/まつはこたへむ
50536 柏木
時しあれは/かはらぬいろに/ゝほひけり/かたえかれにし/やとのさくらも
50636 柏木
この春は/やなきのめにそ/たまはぬく/さきちる花の/ゆくゑしらねは
50736 柏木
このしたの/しつくにぬれて/さかさまに/かすみのころも/きたる春かな
50836 柏木
なき人も/思はさりけむ/うちすてゝ/ゆふへのかすみ/きみきたれとは
50936 柏木
うらめしや/かすみのころも/たれきよと/はるよりさきに/花のちりけむ
51036 柏木
ことならは/ならしのえたに/ならさなむ/はもりの神の/ゆるしありきと
51136 柏木
かしは木に/はもりの神は/まさすとも/人ならすへき/やとのこすゑか
51237 横笛
よをわかれ/いりなむみちは/をくるとも/おなしところを/君もたつねよ
51337 横笛
うき世には/あらぬところの/ゆかしくて/そむく山ちに/思ひこそいれ
51437 横笛
うきふしも/わすれすなから/くれ竹の/こはすてかたき/物にそありける
51537 横笛
ことにいてゝ/いはぬもいふに/まさるとは/人にはちたる/けしきをそみる
51637 横笛
ふかきよの/あはれはかりは/きゝわけと/ことよりかほに/えやはひきける
51737 横笛
露しけき/むくらのやとに/いにしへの/秋にかはらぬ/むしのこゑかな
51837 横笛
よこふえの/しらへはことに/かはらぬを/むなしくなりし/ねこそつきせね
51937 横笛
笛たけに/ふきよる風の/ことならは/すゑのよなかき/ねにつたへなむ
52038 鈴虫
はちす葉を/おなしうてなと/契をきて/露のわかるゝ/けふそかなしき
52138 鈴虫
へたてなく/はちすのやとを/ちきりても/君か心や/すましとすらむ
52238 鈴虫
大かたの/秋をはうしと/しりにしを/ふりすてかたき/すゝむしのこゑ
52338 鈴虫
心もて/草のやとりを/いとへとも/なをすゝむしの/声そふりせぬ
52438 鈴虫
雲のうへを/かけはなれたる/すみかにも/ゝのわすれせぬ/秋の夜の月
52538 鈴虫
月かけは/おなし雲井に/みえなから/わかやとからの/秋そかはれる
52639 夕霧
山さとの/あはれをそふる/ゆふきりに/たちいてん空も/なき心ちして
52739 夕霧
やまかつの/まかきをこめて/たつきりも/心そらなる/人はとゝめす
52839 夕霧
われのみや/うき世をしれる/ためしにて/ぬれそふ袖の/なをくたすへき
52939 夕霧
大かたは/われぬれきぬを/きせすとも/くちにし袖の/なやはかくるゝ
53039 夕霧
おきはらや/軒はの露に/そほちつゝ/やへたつきりを/わけそゆくへき
53139 夕霧
わけゆかむ/草はの露を/かことにて/なをぬれきぬを/かけんとやおもふ
53239 夕霧
たましいを/つれなき袖に/とゝめをきて/わか心から/まとはるゝかな
53339 夕霧
せくからに/あさゝそみえん/やま河の/なかれてのなを/つゝみはてすは
53439 夕霧
をみなへし/しほるゝのへを/いつことて/一よはかりの/やとをかりけむ
53539 夕霧
秋のゝの/草のしけみは/わけしかと/かりねのまくら/むすひやはせし
53639 夕霧
あはれをも/いかにしりてか/なくさめむ/あるやこひしき/なきやかなしき
53739 夕霧
いつれとか/わきてなかめん/きえかへる/露も草はの/うへとみぬよを
53839 夕霧
里とをみ/をのゝしのはら/わけてきて/われもしかこそ/こゑもおしまね
53939 夕霧
ふちころも/露けき秋の/山ひとは/しかのなくねに/ねをそそへつる
54039 夕霧
みし人の/かけすみはてぬ/池水に/ひとりやともる/秋の夜の月
54139 夕霧
いつとかは/おとろかすへき/あけぬよの/ゆめさめてとか/いひしひとこと
54239 夕霧
あさゆふに/なくねをたつる/をの山は/たえぬなみたや/をとなしの滝
54339 夕霧
のほりにし/みねのけふりに/たちましり/おもはぬかたに/なひかすもかな
54439 夕霧
恋しさの/なくさめかたき/かたみにて/なみたにくもる/玉のはこかな
54539 夕霧
うらみわひ/むねあきかたき/冬のよに/またさしまさる/関のいはかと
54639 夕霧
なるゝ身を/うらむるよりは/松しまの/あまのころもに/たちやかへまし
54739 夕霧
まつしまの/あまのぬれきぬ/なれぬとて/ぬきかへつてふ/なをたゝめやは
54839 夕霧
ちきりあれや/君をこゝろに/とゝめをきて/あはれとおもふ/うらめしときく
54939 夕霧
なにゆへか/世にかすならぬ/みひとつを/うしともおもひ/かなしともきく
55039 夕霧
かすならは/みにしられまし/世のうさを/人のためにも/ぬらす袖かな
55139 夕霧
人のよの/うきをあはれと/みしかとも/みにかへんとは/おもはさりしを
55240 御法
おしからぬ/この身なからも/かきりとて/たきゝつきなん/ことのかなしさ
55340 御法
たきゝこる/思ひはけふを/はしめにて/この世にねかふ/のりそはるけき
55440 御法
たえぬへき/みのりなからそ/たのまるゝ/よゝにとむすふ/中の契を
55540 御法
むすひをく/ちきりはたえし/大方の/ゝこりすくなき/みのりなりとも
55640 御法
をくとみる/程そはかなき/ともすれは/風にみたるゝ/萩の上露
55740 御法
やゝもせは/きえをあらそふ/露のよに/をくれさきたつ/程へすもかな
55840 御法
秋風に/しはしとまらぬ/露のよを/たれか草はの/うへとのみみん
55940 御法
いにしへの/秋の夕の/恋しきに/いまはとみえし/あけくれの夢そ
56040 御法
いにしへの/秋さへいまの/心ちして/ぬれにし袖に/露そをきそふ
56140 御法
露けさは/むかしいまとも/おもほえす/大方秋の/夜こそつらけれ
56240 御法
かれはつる/のへをうしとや/なき人の/秋に心を/とゝめさりけん
56340 御法
のほりにし/雲井なからも/かへりみよ/我秋はてぬ/つねならぬよに
56441 幻
わかやとは/花もてはやす/人もなし/なにゝか春の/たつねきつらん
56541 幻
香をとめて/きつるかひなく/大方の/花のたよりと/いひやなすへき
56641 幻
うき世には/雪きえなんと/思つゝ/おもひのほかに/なをそ程ふる
56741 幻
うへてみし/花のあるしも/なきやとに/しらすかほにて/きゐる鴬
56841 幻
いまはとて/あらしやはてん/なき人の/心とゝめし/春のかきねを
56941 幻
なく〱も/かへりにしかな/かりの世は/いつこもついの/とこよならぬに
57041 幻
かりかゐし/なはしろ水の/たえしより/うつりし花の/かけをたにみす
57141 幻
夏衣/たちかへてける/けふはかり/ふるき思ひも/すゝみやはせぬ
57241 幻
は衣の/うすきにかはる/けふよりは/うつ蝉の世そ/いとゝかなしき
57341 幻
さもこそは/よるへの水に/みくさゐめ/けふのかさしよ/名さへわするゝ
57441 幻
大かたは/おもひすてゝし/世なれとも/あふひは猶や/つみおかすへき
57541 幻
なき人を/しのふるよひの/むら雨に/ぬれてやきつる/山ほとゝきす
57641 幻
ほとゝきす/君につてなん/ふるさとの/はなたち花は/いまそさかりと
57741 幻
つれ〱と/我なきくらす/夏の日を/かことかましき/むしのこゑ哉
57841 幻
よるをしる/ほたるをみても/かなしきは/時そともなき/おもひなりけり
57941 幻
七夕の/あふせは雲の/よそにみて/わかれの庭に/露そをきそふ
58041 幻
君こふる/涙はきはも/なき物を/けふをはなにの/はてといふらん
58141 幻
人こふる/我身もすゑに/なりゆけと/のこりおほかる/涙なりけり
58241 幻
もろともに/おきゐし菊の/しら露も/ひとりたもとに/かゝる秋かな
58341 幻
おほそらを/かよふまほろし/夢にたに/みえこぬ玉の/ゆくゑたつねよ
58441 幻
宮人は/とよのあかりと/いそくけふ/日かけもしらて/くらしつるかな
58541 幻
しての山/こえにし人を/したふとて/跡をみつゝも/猶まとふかな
58641 幻
かきつめて/みるもかひなし/もしほ草/おなし雲井の/煙とをなれ
58741 幻
春まての/命もしらす/雪のうちに/色つく梅を/けふかさしてん
58841 幻
千世の春/みるへき花と/いのりをきて/わか身そ雪と/ゝもにふりぬる
58941 幻
物おもふと/すくる月日も/しらぬまに/年もわか世も/けふやつきぬる
59042 匂宮
おほつかな/誰にとはまし/いかにして/はしめもはても/しらぬ我身そ
59143 紅梅
こゝろありて/風のにほはす/そのゝ梅に/まつ鴬の/とはすやあるへき
59243 紅梅
花のかに/さそはれぬへき/身なりせは/かせのたよりを/すくさましやは
59343 紅梅
もとつかの/にほへるきみか/袖ふれは/花もえならぬ/名をやちらさむ
59443 紅梅
花のかを/にほはす宿に/とめゆかは/色にめつとや/人のとかめん
59544 竹河
おりてみは/いとゝ匂も/まさるやと/すこし色めけ/梅のはつ花
59644 竹河
よそにては/もきゝなりとや/さたむらん/したにゝほへる/梅のはつ花
59744 竹河
人はみな/花に心を/うつすらむ/ひとりそまとふ/春の夜のやみ
59844 竹河
おりからや/あはれもしらむ/梅の花/たゝかはかりに/うつりしもせし
59944 竹河
竹かはの/はしうちいてし/一ふしに/ふかき心の/そこはしりきや
60044 竹河
竹河に/夜をふかさしと/いそきしも/いかなるふしを/おもひをかまし
60144 竹河
桜ゆへ/風に心の/さはくかな/おもひくまなき/花とみる〱
60244 竹河
さくとみて/かつはちりぬる/花なれは/まくるをふかき/うらみともせす
60344 竹河
風にちる/ことはよのつね/枝なから/うつろふ花を/たゝにしもみし
60444 竹河
心ありて/池のみきはに/おつる花/あわとなりても/我かたによれ
60544 竹河
大空の/風にちれとも/さくら花/をのか物とそ/かきつめてみる
60644 竹河
桜花/にほひあまたに/ちらさしと/おほふはかりの/袖はありやは
60744 竹河
つれなくて/すくる月日を/かそへつゝ/物うらめしき/くれの春かな
60844 竹河
いてやなそ/数ならぬ身に/かなはぬは/人にまけしの/心なりけり
60944 竹河
わりなしや/つよきによらむ/かちまけを/心ひとつに/いかゝまかする
61044 竹河
あはれとて/手をゆるせかし/いきしにを/君にまかする/我身とならは
61144 竹河
花をみて/春はくらしつ/けふよりや/しけきなけきの/したにまとはむ
61244 竹河
けふそしる/空をなかむる/気色にて/花に心を/うつしけりとも
61344 竹河
あはれてふ/つねならぬ世の/ひとことも/いかなる人に/かくる物そは
61444 竹河
いける世の/しには心に/まかせねは/きかてやゝまむ/君かひとこと
61544 竹河
手にかくる/物にしあらは/藤の花/まつよりまさる/色をみましや
61644 竹河
むらさきの/色はかよへと/藤の花/心にえこそ/かゝらさりけれ
61744 竹河
竹かはの/その夜のことは/思いつや/しのふはかりの/ふしはなけれと
61844 竹河
なかれての/たのめむなしき/竹かはに/世はうきものと/おもひしりにき
61945 橋姫
うちすてゝ/つかひさりにし/水とりの/かりのこの世に/たちおくれけん
62045 橋姫
いかてかく/すたちけるそと/思ふにも/うき水とりの/契をそしる
62145 橋姫
なく〱も/はねうちきする/君なくは/我そすもりに/なりははてまし
62245 橋姫
みし人も/宿もけふりに/なりにしを/なにとて我身/きえのこりけん
62345 橋姫
世をいとふ/心は山に/かよへとも/やへたつ雲を/君やへたつる
62445 橋姫
あとたえて/心すむとは/なけれとも/世をうち山に/やとをこそかれ
62545 橋姫
山おろしに/たえぬこの葉の/露よりも/あやなくもろき/我涙かな
62645 橋姫
あさほらけ/家路もみえす/たつねこし/まきのを山は/霧こめてけり
62745 橋姫
雲のゐる/嶺のかけちを/秋きりの/いとゝへたつる/ころにもあるかな
62845 橋姫
橋ひめの/心をくみて/たかせさす/さほのしつくに/袖そぬれぬる
62945 橋姫
さしかへる/うちの河おさ/あさ夕の/しつくや袖を/くたしはつらむ
63045 橋姫
めのまへに/この世をそむく/君よりも/よそにわかるゝ/玉そかなしき
63145 橋姫
命あらは/それともみまし/人しれぬ/岩ねにとめし/松のおいすゑ
63246 椎本
山風に/かすみふきとく/こゑはあれと/へたてゝみゆる/をちのしら浪
63346 椎本
をちこちの/汀になみは/へたつとも/なをふきかよへ/うちの河風
63446 椎本
山さくら/にほふあたりに/たつねきて/おなしかさしを/おりてける哉
63546 椎本
かさしおる/花のたよりに/山かつの/かきねをすきぬ/春のたひ人
63646 椎本
我なくて/草の庵りは/あれぬとも/このひとことは/かれしとそ思
63746 椎本
いかならむ/世にかかれせむ/なかきよの/契むすへる/草のいほりは
63846 椎本
をしかなく/秋の山さと/いかならむ/こ萩か露の/かゝる夕くれ
63946 椎本
なみたのみ/きりふたかれる/山里は/まかきに鹿そ/もろこゑになく
64046 椎本
あさきりに/ともまとはせる/鹿の音を/おほかたにやは/あはれともきく
64146 椎本
色かはる/あさちをみても/すみそめに/やつるゝ袖を/思ひこそやれ
64246 椎本
色かはる/袖をはつゆの/やとりにて/わか身そさらに/をき所なき
64346 椎本
秋きりの/はれぬ雲ゐに/いとゝしく/このよをかりと/いひしらすらむ
64446 椎本
君なくて/岩のかけみち/たえしより/松の雪をも/なにとかはみる
64546 椎本
おく山の/松葉につもる/雪とたに/きえにし人を/思はましかは
64646 椎本
雪ふかき/山のかけはし/きみならて/またふみかよふ/あとをみぬかな
64746 椎本
つらゝとち/駒ふみしたく/山川を/しるへしかてら/まつやわたらむ
64846 椎本
たちよらむ/かけとたのみし/しゐかもと/むなしきとこに/なりにける哉
64946 椎本
君かおる/みねのわらひと/みましかは/しられやせまし/春のしるしも
65046 椎本
雪ふかき/汀のこせり/たかために/つみかはやさん/おやなしにして
65146 椎本
つてにみし/やとのさくらを/この春は/かすみへたてす/おりてかさゝむ
65246 椎本
いつことか/たつねておらむ/すみそめに/かすみこめたる/やとの桜を
65347 総角
あけまきに/なかき契を/むすひこめ/おなしところに/よりもあはなむ
65447 総角
ぬきもあへす/もろき涙の/たまのをに/なかき契を/いかゝむすはん
65547 総角
山さとの/あはれしらるゝ/こゑ〱に/とりあつめたる/あさほらけかな
65647 総角
鳥のねも/きこえぬ山と/おもひしを/世のうきことは/たつねきにけり
65747 総角
おなしえを/わきてそめける/山ひめに/いつれかふかき/色とゝはゝや
65847 総角
山ひめの/そむるこゝろは/わかねとも/うつろふかたや/ふかきなるらん
65947 総角
をみなへし/さけるおほのを/ふせきつゝ/心せはくや/しめをゆふらむ
66047 総角
霧ふかき/あしたのはらの/をみなへし/こゝろをよせて/みる人そみる
66147 総角
しるへせし/我やかへりて/まとふへき/心もゆかぬ/あけくれの道
66247 総角
かた〱に/くらす心を/おもひやれ/人やりならぬ/道にまとはゝ
66347 総角
よのつねに/思やすらむ/つゆふかき/道のさゝはら/わけてきつるも
66447 総角
さよ衣/きてなれきとは/いはすとも/かことはかりは/かけすしもあらし
66547 総角
へたてなき/心はかりは/かよふとも/なれし袖とは/かけしとそおもふ
66647 総角
なかたえむ/ものならなくに/はしひめの/かたしく袖や/よはにぬらさん
66747 総角
たえせしの/わかたのみにや/うちはしの/はるけき中を/まちわたるへき
66847 総角
いつそやも/花のさかりに/ひとめみし/木のもとさへや/秋はさひしき
66947 総角
さくらこそ/思しらすれ/さきにほふ/花ももみちも/つねならぬよを
67047 総角
いつこより/秋は行けむ/やまさとの/紅葉のかけは/すきうきものを
67147 総角
みし人も/なき山さとの/岩かきに/心なかくも/はへるくす哉
67247 総角
秋はてゝ/さひしさまさる/木のもとを/吹なすくしそ/みねの松かせ
67347 総角
わか草の/ねみむものとは/おもはねと/むすほゝれたる/心ちこそすれ
67447 総角
なかむるは/おなし雲井を/いかなれは/おほつかなさを/そふる時雨そ
67547 総角
あられふる/み山のさとは/あさ夕に/なかむる空も/かきくらしつゝ
67647 総角
霜さゆる/みきはの千鳥/うちわひて/なくねかなしき/あさほらけかな
67747 総角
あかつきの/霜うちはらひ/鳴ちとり/ものおもふ人の/心をやしる
67847 総角
かきくもり/日かけもみえぬ/おく山に/心をくらす/ころにもある哉
67947 総角
くれなゐに/おつる涙も/かひなきは/かたみの色を/そめぬなりけり
68047 総角
をくれしと/空行月を/したふかな/つゐにすむへき/このよならねは
68147 総角
恋わひて/しぬるくすりの/ゆかしきに/雪の山にや/あとをけなまし
68247 総角
きしかたを/思ひいつるも/はかなきを/行すゑかけて/なにたのむらん
68347 総角
行すゑを/みしかき物と/おもひなは/めのまへにたに/そむかさらなん
68448 早蕨
きみにとて/あまたの春を/つみしかは/つねをわすれぬ/はつわらひなり
68548 早蕨
このはるは/たれにかみせむ/なき人の/かたみにつめる/みねのさわらひ
68648 早蕨
おる人の/心にかよふ/はなゝれや/いろにはいてす/したにゝほへる
68748 早蕨
みる人に/かことよせける/花のえを/心してこそ/おるへかりけれ
68848 早蕨
はかなしや/かすみのころも/たちしまに/花のひもとく/おりもきにけり
68948 早蕨
みる人も/あらしにまよふ/山さとに/むかしおほゆる/花のかそする
69048 早蕨
そてふれし/むめはかはらぬ/にほひにて/ねこめうつろふ/やとやことなる
69148 早蕨
さきにたつ/なみたのかはに/みをなけは/人にをくれぬ/いのちならまし
69248 早蕨
身をなけむ/なみたのかはに/しつみても/こひしきせゝに/わすれしもせし
69348 早蕨
人はみな/いそきたつめる/そてのうらに/ひとりもしほを/たるゝあま哉
69448 早蕨
しほたるゝ/あまの衣に/ことなれや/うきたるなみに/ぬるゝわかそて
69548 早蕨
ありふれは/うれしきせにも/あひけるを/身をうちかはに/なけてましかは
69648 早蕨
すきにしか/こひしきことも/わすれねと/けふはたまつも/ゆく心かな
69748 早蕨
なかむれは/山よりいてゝ/ゆく月も/世にすみわひて/やまにこそいれ
69848 早蕨
しなてるや/にほのみつうみ/にこく舟の/まほならねとも/あひみし物を
69949 宿木
よのつねの/かき根ににほふ/花ならは/こゝろのまゝに/おりてみましを
70049 宿木
霜にあへす/かれにしそのゝ/菊なれと/のこりの色は/あせすもある哉
70149 宿木
今朝のまの/色にやめてん/をく露の/きえぬにかゝる/花とみる〱
70249 宿木
よそへてそ/みるへかりける/しら露の/ちきりかをきし/あさかほの花
70349 宿木
きえぬまに/かれぬる花の/はかなさに/をくるゝ露は/猶そまされる
70449 宿木
おほ空の/月たにやとる/わかやとに/待よひ過て/みえぬきみかな
70549 宿木
山さとの/まつのかけにも/かくはかり/身にしむ秋の/風はなかりき
70649 宿木
をみなへし/しほれそまさる/あさ露の/いかにをきける/名残なるらん
70749 宿木
大かたに/きかましものを/日くらしの/声うらめしき/秋のくれ哉
70849 宿木
うちわたし/よにゆるしなき/せきかはを/みなれそめけん/名こそおしけれ
70949 宿木
ふかゝらす/うへはみゆれと/せきかはの/したのかよひは/たゆる物かは
71049 宿木
いたつらに/わけつる道の/露しけみ/むかしおほゆる/秋の空哉
71149 宿木
また人に/なれける袖の/うつりかを/わか身にしめて/うらみつる哉
71249 宿木
みなれぬる/中のころもと/たのめしを/かはかりにてや/かけはなれなん
71349 宿木
むすひける/契ことなる/したひもを/たゝひとすちに/うらみやはする
71449 宿木
やとりきと/思ひいてすは/このもとの/たひねもいかに/さひしからまし
71549 宿木
あれはつる/くちきのもとを/やとりきと/思ひをきける/程のかなしさ
71649 宿木
ほにいてぬ/もの思ふらし/ゝのすゝき/まねくたもとの/露しけくして
71749 宿木
秋はつる/野辺のけしきも/しのすゝき/ほのめく風に/つけてこそしれ
71849 宿木
すへらきの/かさしにおると/藤のはな/をよはぬえたに/袖かけてけり
71949 宿木
よろつよを/かけてにほはん/花なれは/けふをもあかぬ/色とこそみれ
72049 宿木
きみかため/おれるかさしは/むらさきの/くもにをとらぬ/花のけしきか
72149 宿木
よのつねの/色ともみえす/雲ゐまて/たちのほりたる/ふちなみの花
72249 宿木
かほとりの/声も聞しに/かよふやと/しけみをわけて/けふそたつぬる
72350 東屋
みし人の/かたしろならは/身にそへて/恋しきせゝの/なて物にせむ
72450 東屋
みそき川/せゝにいたさん/なて物を/身にそふ影と/たれかたのまん
72550 東屋
しめゆひし/こ萩かうへも/まよはぬに/いかなる露に/うつる下葉そ
72650 東屋
宮き野の/こはきかもとゝ/しらませは/露も心を/わかすそあらまし
72750 東屋
ひたふるに/うれしからまし/世の中に/あらぬ所と/思はましかは
72850 東屋
浮世には/あらぬ所を/もとめても/君かさかりを/みるよしもかな
72950 東屋
たえはてぬ/し水になとか/なき人の/おも影をたに/とゝめさりけん
73050 東屋
さしとむる/むくらやしけき/あつまやの/あまりほとふる/雨そゝきかな
73150 東屋
かたみそと/みるにつけては/朝露の/所せきまて/ぬるゝ袖哉
73250 東屋
やとり木は/色かはりぬる/秋なれと/むかしおほえて/すめる月かな
73350 東屋
里の名も/むかしなからに/みし人の/おもかはりせる/ねやの月影
73451 浮舟
またふりぬ/ものにはあれと/君かため/ふかき心に/まつとしらなん
73551 浮舟
なかきよを/たのめてもなを/かなしきは/たゝあすしらぬ/いのちなりけり
73651 浮舟
こゝろをは/なけかさらまし/いのちのみ/さためなきよと/おもはましかは
73751 浮舟
よにしらす/まとふへきかな/さきにたつ/なみたもみちを/かきくらしつゝ
73851 浮舟
なみたをも/ほとなきそてに/せきかねて/いかにわかれを/とゝむへき身そ
73951 浮舟
うちはしの/なかきちきりは/くちせしを/あやふむかたに/こゝろさはくな
74051 浮舟
たえまのみ/よにはあやうき/うちはしを/くちせぬものと/なをたのめとや
74151 浮舟
としふとも/かはらんものか/たちはなの/こしまのさきに/ちきるこゝろは
74251 浮舟
たちはなの/こしまのいろは/かはらしを/このうきふねそ/ゆくゑしられぬ
74351 浮舟
みねのゆき/みきはのこほり/ふみわけて/君にそまとふ/みちはまとはす
74451 浮舟
ふりみたれ/みきはにこほる/ゆきよりも/なかそらにてそ/われはけぬへき
74551 浮舟
なかめやる/そなたの雲も/みえぬまて/そらさへくるゝ/ころのわひしさ
74651 浮舟
みつまさる/おちのさと人/いかならん/はれぬなかめに/かきくらすころ
74751 浮舟
さとのなを/我身にしれは/やましろの/うちのわたりそ/いとゝすみうき
74851 浮舟
かきくらし/はれせぬみねの/あまくもに/うきてよをふる/身をもなさはや
74951 浮舟
つれ〱と/身をしるあめの/おやまねは/袖さへいとゝ/みかさまさりて
75051 浮舟
なみこゆる/ころともしらす/ゝゑのまつ/まつらんとのみ/思ひけるかな
75151 浮舟
いつくにか/身をはすてんと/しら雲の/かゝらぬ山も/なく〱そゆく
75251 浮舟
なけきわひ/身をはすつとも/なきかけに/うき名なかさん/ことをこそおもへ
75351 浮舟
からをたに/うきよの中に/とゝめすは/いつこをはかと/君もうらみん
75451 浮舟
のちにまた/あひみんことを/ゝもはなん/この世の夢に/こゝろまとはてす
75551 浮舟
かねのをとの/たゆるひゝきに/ねをそへて/わかよつきぬと/きみにつたへよ
75652 蜻蛉
しのひねや/君もなくらむ/かひもなき/してのたおさに/心かよはゝ
75752 蜻蛉
たちはなの/かほるあたりは/郭公/心してこそ/なくへかりけれ
75852 蜻蛉
われも又/うきふるさとを/あれはては/たれやとりきの/かけをしのはむ
75952 蜻蛉
あはれしる/こゝろは人に/をくれねと/かすならぬ身に/きえつゝそふる
76052 蜻蛉
つねなしと/こゝらよをみる/うき身たに/人のしるまて/なけきやはする
76152 蜻蛉
荻の葉に/露ふきむすふ/秋風も/ゆふへそわきて/身にはしみける
76252 蜻蛉
女郎花/みたるゝ野辺に/ましるとも/露のあたなを/われにかけめや
76352 蜻蛉
花といへは/なこそあたなれ/をみなへし/なへての露に/みたれやはする
76452 蜻蛉
旅ねして/猶心みよ/をみなへし/さかりの色に/うつりうつらす
76552 蜻蛉
宿かさは/ひとよはねなん/大方の/花にうつらぬ/こゝろなりとも
76652 蜻蛉
ありとみて/手にはとられす/みれは又/ゆくゑもしらす/きえしかけろふ
76753 手習
身をなけし/涙の河の/はやき瀬を/しからみかけて/たれかとゝめし
76853 手習
われかくて/うき世の中に/めくるとも/たれかはしらむ/月の都に
76953 手習
あたしのゝ/風になひくな/をみなへし/われしめゆはん/みち遠くとも
77053 手習
うつしうへて/思みたれぬ/をみなへし/うき世をそむく/草の庵に
77153 手習
松虫の/こゑをたつねて/きつれとも/また萩はらの/露にまとひぬ
77253 手習
秋の野ゝ/露わけきたる/かり衣/むくらしけれる/宿にかこつな
77353 手習
ふかき夜の/月をあはれと/みぬ人や/山のはちかき/宿にとまらぬ
77453 手習
山のはに/入まて月を/なかめみん/ねやの板まも/しるしありやと
77553 手習
わすられぬ/昔のことも/ふえ竹の/つらきふしにも/ねそなかれける
77653 手習
笛のねに/昔のことも/しのはれて/かへりし程も/袖そぬれにし
77753 手習
はかなくて/世にふる河の/うきせには/尋もゆかし/二もとの杉
77853 手習
ふる河の/杉の本たち/しらねとも/過にし人に/よそへてそみる
77953 手習
心には/秋の夕を/わかねとも/なかむる袖に/露そみたるゝ
78053 手習
山里の/秋の夜ふかき/あはれをも/ゝの思ふ人は/思こそしれ
78153 手習
憂物と/思もしらて/すくす身を/物おもふ人と/ひとはしりけり
78253 手習
なきものに/身をも人をも/思つゝ/捨てし世をそ/さらにすてつる
78353 手習
かきりそと/思なりにし/世間を/返〱も/そむきぬるかな
78453 手習
きし遠く/漕はなるらむ/あま舟に/乗をくれしと/いそかるゝかな
78553 手習
心こそ/うき世の岸を/はなるれと/行ゑもしらぬ/あまのうき木を
78653 手習
木枯の/吹にし山の/ふもとには/立かくすへき/かけたにそなき
78753 手習
待人も/あらしとおもふ/山里の/梢をみつゝ/猶そ過うき
78853 手習
大かたの/世をそむきける/君なれと/いとふによせて/身こそつらけれ
78953 手習
かきくらす/野山の雪を/なかめても/ふりにしことそ/けふもかなしき
79053 手習
山里の/雪まのわかな/つみはやし/猶おいさきの/たのまるゝかな
79153 手習
雪ふかき/野へのわかなも/今よりは/君かためにそ/年もつむへき
79253 手習
袖ふれし/人こそみえね/花の香の/それかとにほふ/春の明ほの
79353 手習
みし人は/影もとまらぬ/水の上に/落そふ涙/いとゝせきあへす
79453 手習
あま衣/かはれる身にや/ありしよの/かたみに袖を/かけてしのはん
79554 夢浮橋
のりのしと/たつぬるみちを/しるへにて/おもはぬやまに/ふみまとふかな